法教育シンポジウム-未来を拓く法教育in京都-

 2010年10月29日,「法教育シンポジウム-未来を拓く法教育in京都-」(@龍谷大学アバンティ響都ホール)を参観してきました。

 法教育シンポジウムは法務省が中心となって開催している法教育普及のためのシンポジウムであり,これまでも東京,大阪,横浜,福岡,仙台で実施されています。今回のシンポジウムは京都で開催されましたが,京都では学校・教育委員会・法律専門家などの様々な団体が連携・協力して法教育活動を行う「京都法教育推進プロジェクト」が開始されており,法教育の新しい取り組みとして注目されています。以下,シンポジウムの内容をご紹介します(以下は私の理解に基づくものであり,シンポジウムの内容を忠実に再現するものではありませんので,ご注意下さい。)。

 

基調講演「京都法教育推進プロジェクトの取組みとその意義」/笠井正俊教授

 最初は笠井正俊教授による基調講演「京都法教育推進プロジェクトの取組みとその意義」です。笠井教授は法務省の法教育推進協議会の委員であり,京都法教育推進プロジェクトにも参加されています。

 笠井教授は,法教育をめぐるこれまでの動きを概観した上で,学習指導要領の改訂により教育課程に法教育が盛り込まれたことで,法教育は基盤・環境の整備から実践の段階に至ったとします。

 そして,今後求められる法教育活動の方向性として,これまでの法虚位句実践の経験の蓄積と伝播,法教育教材の活用と開発,地域社会の専門家が法教育において役割を果たすことの3点を挙げ,特に3点目について,学校の教員と地域の関係機関・専門家が連携・協力して法的なものの見方を伝えていくのが重要であるとします。

 このような連携・協力を行うためには,学校・教員が専門家にアクセスするための窓口や調整のための機関が重要であるとして,法テラスにはその役割が期待されるとします。また,法教育にかかる費用面の負担ということも重要な検討課題であるとされます。

 学校・教員と法律専門家との関係については継続的なものであるべきと考えられるが,今後法教育が継続されるなかでは徐々に学校の教員が中心となっていくことになると考えられ,学校教育である以上はそのような方向が望ましいとされます。

 今回の京都法教育推進プロジェクトでは多数の関係機関が協力する「オール京都」の態勢で,学校での法教育授業の実践や法律専門家による出前授業,裁判傍聴,模擬裁判などの具体的な活動を行っており,笠井教授自身も高等学校において,民事の事例に基づく模擬裁判形式の法教育授業の実践に継続的に関わっているということでした。

 最後に,このプロジェクトの意義と展望について,法教育についての「体系的・計画的な」連携・協力の具体的な実践である点が新しいものであり,地域社会の専門家の連携・協力による法教育の取組みを展開する上でのモデルになるものであるとまとめられました。

 

立命館中学校1年生での法教育実践報告/加賀山万理子教諭

 平成22年9月に立命館中学校で中学1年生を対象に2時間構成で実施した法教育授業について,授業者である加賀山万理子先生から,授業の様子を撮影したビデオを上映しながら紹介されました。

 授業の内容は,高層マンションの建設計画をめぐる問題を通じて地域におけるルールづくりについて生活者の視点から考えさせるというものであり,授業に参加した生徒の反応も良く活発な授業の様子がうかがえました。

 シンポジウム終了後に懇親の席で伺ったところによると,加賀山先生は大学院の修士課程で法教育について研究されたということで,今後も学校教育の現場から良い法教育実践を発信していただけるものと大変期待しております。

 

立命館宇治高等学校2年生による模擬裁判公開授業/太田勝基教諭

 立命館宇治高等学校の高校2年生11名(男子2名,女子9名)が登壇し,模擬裁判形式で証人役・被告人役に対する尋問を行いました。

 尋問の内容は,太田先生が作成した模擬裁判資料に基づいて,学生だけの力で数週間かけて準備したものです。学生が一生懸命に考えて立派に尋問を組み立てているところ,あるいは反対尋問で思ったような結果が得られずに苦労しているところが印象的でした。

 

パネルディスカッション「法教育の普及における地域社会の役割~学校と地域社会はどう連携すべきか~」

【パネリスト】市田ひろみ(服飾評論家・エッセイスト),伊藤和之(弁護士),太田勝基(立命館宇治中学・高等学校教諭),島本由紀(京都市教育委員会),松宮研二(京都府立嵯峨野高等学校教諭),丸山嘉代(法務省大臣官房付)

【コーディネーター】草野満代(日本司法支援センター理事)

 

 表題の件に関しての様々な意見交換がなされましたが,学校と地域社会(とりわけ法律専門家)との連携に際しての課題として浮かび上がってきたのは,学校側・法律専門家側それぞれの敷居の高さということでした。

 授業実践報告・公開授業をされた学校では教員側の意欲関心と積極的な取組みにより法教育実践が実現されていますが,このような教員側の積極的な姿勢がなければ,ただでさえ忙しい学校に法教育を普及させることは難しいのではないかと思いました。学校現場の先生が,法教育の授業構成や教材は教員の側が自分で考えて消化する必要があるとおっしゃっておりましたが,まさにその通りのことが法教育の普及のために必要なのだろうと思います。

 

 シンポジウムの終了後には,地元京都弁護士会の先生方のご案内で懇親会が行われましたが,そこで各地の弁護士会の委員と法教育について意見交換をできたこと,また途中から合流された加賀山先生,太田先生とお話できたことも大変有意義でした。

 

今回のシンポジウムについては村松謙弁護士のブログでも詳しく紹介されておりますのでご覧下さい。

http://yaplog.jp/teng/archive/1783

また,橋本康弘先生のブログにもシンポジウムについてのご報告がなされておりますのでご覧下さい。

http://yhasimot.exblog.jp/14340159/