法教育:法教育は「知識教育」ではないか?

 弁護士会をはじめとして様々な主体が「法教育」の取り組みを推進していますが,「法教育」とは何かについての理解は一様ではありません。最近の活動を通じて考えたことを少しずつ整理していきたいと思います。

 法務省法教育研究会の「報告書」は,法教育とは「法律専門家ではない一般の人々が,法や司法制度,これらの基礎になっている価値を理解し,法的なものの考え方を身に付けるための教育」(2頁)であるとしています。

 また,このような法教育は,「法曹養成のための法学教育などとは異なり,法律専門家ではない一般の人々が対象であること,法律の条文や制度を覚える知識型の教育ではなく,法やルールの背景にある価値観や司法制度の機能,意義を考える思考型の教育であること,社会に参加することの重要性を意識付ける社会参加型の教育であることに大きな特色がある。」(2頁)としています。

 上記のとおり「報告書」は,法教育は「知識型の教育ではな(い)」というところに特色があるとしています。そうすると「実生活に役立つ法律の知識をわかりやすく伝える」というような教育は,「法教育」ではないということになるのかという疑問が生じます。このような教育が法教育ではないということになれば,「消費者教育」や「労働法教育」(もちろんそれらの全部ではありませんが)は法教育ではないということにもなりそうです。

 しかし,知識と思考,あるいは知識型の教育と思考型の教育をそのような極端な対立関係で捉える必要はないと思います。「法や司法制度,これらの基礎になっている価値を理解し,法的なものの考え方を身に付けるため」には,知識と思考の両方が重要であることはいうまでもありません。

 「報告書」において法教育の特色として「思考型の教育」であることがあげられたのは,これまでの法や司法制度に関する教育がもっぱら知識を伝えるだけで考え方を教えてこなかったのではないかという反省から,「思考」の方にウェイトを置いたものと理解すればよいものと思います。

 以上のとおり,知識型の教育か思考型の教育かという二者択一を過度に強調することは妥当ではなく,「実生活に役立つ法律の知識をわかりやすく伝える」ような教育について「知識型の教育」であるから「法教育」ではないとして除外する必要は無いと思います。

 しかしながら,「消費者教育」や「労働法教育」を「法教育」として捉えるとしても,それらの個々の「○○法教育」と「法教育」との関係については,更に考え方,捉え方が分かれるのではないかと思います。

 この点は,法教育の目的や対象をどう捉えるかによって考え方が変わってくるところであると思いますが,これについてはまた考えたいと思います。