法教育:ジュリスト2010年7月15日号特集

 ジュリスト2010年7月15日号で「法教育と法律学の課題」という特集が組まれているのを立ち読みで知りました。

 執筆者は,大村敦志教授を除いては法教育(法務省の法教育研究会・法教育推進協議会)にはあまり関わりのない先生方(東京大学の先生が多い)です。

 憲法・民法・刑法・労働法・知財法など各法律分野の専門家が法教育で教えるべきと考える内容について論じている点は参考にはなるのですが,反対に,各法律分野において法教育にどのような意義を認めているか(あるいはいないか)についての論述が少ないように思いました。

 例えば,刑法にあっては,法律により犯罪に対する刑罰の賦課を予告すること(そして,現に犯罪が行われた場合に刑罰を賦課すること)によって犯罪の予防を実現しようとするのですから,刑法がその効果を十全に発揮するためには,前提として国民に刑法の内容が知られている必要があります。

 しかしながら,義務教育の内容をみても,刑法にどのような犯罪が定められているのか(刑罰のカタログ)についてまとまった学習機会は設けられていないように思います。このような点について,刑法学からはどのように考えるのでしょうか。小中高生に刑法の細かい知識を教える必要まではないことは当然としても「何が犯罪となるのか」についても教えないというのであれば,「よらしむべし知らしむべからず」であり妥当でないように思います。

 また,例えば「責任なければ処罰なし」という責任主義の考え方が現行刑法の基礎にある考え方であり,したがって法教育で扱うべき重要な事項であるとしても,刑法39条や41条などの責任主義の考え方自体に国民から疑義が向けられている以上,単に責任主義を「教え込む」ことは法教育としては不十分だと思います。刑法学は,現行法の責任主義をどのように擁護する用意があるのか(あるいはないのか)を示して,国民と対話することが法教育の観点からは重要であるように思います。